ハニー、俺の隣に戻っておいで
ニーナが素直なのは滅多に無いことだが、ジョンの物腰がそんなに柔らかいのは輪をかけて珍しいことだ。

「シー社長、 ルーさんは二階で寝かせてあげた方がいいんじゃないですか? 車の中で寝るのは体が凝りますからね」と、ヘンリーがニーナを起こさないよう低声で提案する。

ジョンは腕の中のお嬢さんを見下ろすと、思わずそっと頭を撫でてしまった。 そして、二階に運ぶために慎重に手で頭を支えると、座席の背もたれに寄りかかった。

四月も上旬で、まだ寒さが残っている。 ニーナはジョンの腕から離れると不機嫌そうに眉をひそめ、ジョンの腕の中にまた潜り込んでしまった。

「とってもあったかいの」ニーナは夢うつつで満足げにそう呟いたが、 相変わらず顔を赤らめたまま、ジョンのシャツの袖を自分の方にぎゅっと引っ張る。

こうなってはジョンにはどうすることもできなかった。 起きているときはジョンをできるだけ遠ざけ、いかなる接触も避けようとするニーナだが、酔って眠っているときは正反対で、 今はジョンになるべくぴったり体をくっつけようとしている。

このお嬢ちゃんをうまく扱う決まったやり方などないのだ。

ジョンは彼女を起こさずに車から連れ出す方法を考えなくてはならなかった。

しばらく考えた結果、ニーナを自分に寄りかからせるしかなさそうだということになったので、 寒くないように彼女を毛布でくるんでから、慎重に身体をずらしながら車外に出る。
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