政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「それに清華はなにかと不用心だからな。
これくらいしておかないと安心できない」

真顔の零士さんは少し、怒っている。
そのせいであんな写真を撮られてしまった身としては、反論できません……。

先に風呂に入れと言われて浴室へ行く。

「うわ……」

鏡を見たらデコルテには赤い花弁が無数に散っていた。

「つけすぎ……」

それは下着の際ギリギリにまでついている。
これってもしかして、それだけ――嫉妬、していたんだろうか。
それでもいつもどおりに過ごしているなんて、零士さんの精神力って凄い……。
私だったらヒステリックに叫んで、糾弾しそうだ。

「……ん?」

身体を洗いながら再びキスマークを確認してふと気づく。
これって、着物だったら見えちゃわない?
明日、お茶のお稽古なのにどうしよう。
明日には消えていますように……。

……などという私の願い虚しく、翌日もバッチリ残っていた。
狼狽えていたらメイドさんがコンシーラーとファンデーションで隠してくれて事なきを得たが……次からは見えないところにしてもらいたい。



――その後。
古手川さんは零士さんの後ろ盾のもと銀行から融資が受けられ、ヤバい人への返済もできた。

「鴇田のおかげだ、ありがとう」
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