政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
融資は神野系列の銀行だったので父の名を出せば融通が利いたかもしれないが、それすらしなかった。
……したくなかった。
それは、フェアじゃないから嫌だ。
なら零士さんの後ろ盾はどうなんだって問題だが、先行投資らしいので深く突っ込まないでおく。
それに服のバリエーションが増えたとか喜んでいたし。

「実は、あれで神鷹さんが浮気を疑って、鴇田と離婚すればいい……とか本気で思っていたとか言ったら怒るか?」

「……はい?」

冗談だと思いたいが、古手川さんは少しも笑っていない。

「僕は鴇田が好きだったんだ」

真っ直ぐに彼が私を見つめる。
本気なのはわかったが、私はそれにどう答えれば。

「鴇田は結婚を嫌がっているんだと思っていた。
だからこれは、鴇田を救うための正しい行いなんだって自分に言い聞かせて。
勘違いも甚だしいな」

薄く笑った彼は、そのときの自分を酷く軽蔑しているようだった。

「実際は神鷹さんに愛され、大事にされているんだな」

「えっ、あっ」

彼の視線が私の首もとへ行き、つい手で押さえていた。
古手川さんと会うに当たって、昨晩も零士さんから〝所有印〟をたくさんつけられた。
見えないところにってお願いしたのに、それじゃ意味がないだろと見えるところにたくさん。
しかも、隠すの禁止とか命令されたので、今日は丸見えだ。
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