政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
零士さんの手が、私の肩を抱き寄せる。

「そうね。
そうしてちょうだい」

しっしと邪険に追い払うように手を振り、お義母さまは襖を閉めた。
その際、鞠子さんが憎しみを込めた目でこちらを睨んでいるのが見えた。

「さ、帰ろう、清華」

零士さんに促されてお稽古場を出、車に乗る。

「よかったんですか……?」

「いいんだ、目的は果たしたし」

秘書が運転する車の中、零士さんはドアに肘をついて外を見ている。
目的って……やっぱり、そうなんだ。
零士さんが皆に、釘を刺しに来たのだというのは直感していた。
でも、なんで?
私はひと言も、お稽古での嫌がらせで困っているだなんて漏らしていない。
まだ私の知らないなにかがあるんだろうか……?
< 190 / 252 >

この作品をシェア

pagetop