政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「じゃあ、お言葉に甘えてそのときはよろしくお願いします」

「ああ、できる限りさせてもらう」

これって思いの外すんなりと、私の計画が実行できそう……?
新しい生活に慣れたら、相談させてもらう。

忙しくて最近話題の映画も観ていないんだ、なんてぼやいている零士さんと一緒にお勧めの映画を観たりしながら着くまでの時間を過ごす。
彼は〝よき旦那〟を演じているように見えた。
私もよき妻であろうと努力をするつもりだし、出だしとしては上出来だと思う。

空港から車へ乗り換え、宿泊先のホテルに着いたのは現地時間の夜八時過ぎだった。

シャンゼリゼ通りがすぐの高級ホテルは観光にも便利そうだ。
アールデコ様式の建物は格調高く、一歩中へ入れば温室と見まごうばかりにふんだんに飾られた花たちが出迎える。

「パリは初めてか?」

「いえ、学生の頃に一度」

つい見上げていた立派なシャンデリアから視線を戻し、にっこりと笑顔を作る。
あのときは夏休みを利用した短期留学だったし、友人とシェアした安いアパルトマンだった。
それもあとで父にバレて、なにかあったらどうするつもりだったんだ!
って大目玉食らったけれど。

部屋はペントハウスだった。

「ここから夜景が見渡せるんだ」

「うわーっ」

ベランダに出て思わず感嘆の声が漏れる。
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