今さら好きだと言いだせない
「山本さんと彼では、全然タイプが違うね」
「山本さんは懐が深いし、面倒見がよくて思いやりのある人ですよ。浮気もしないでしょう」
「芹沢くん、最後の言葉は意地悪だぁ……」

 はぁ、とため息が出た。この堂々巡りな会話こそ不毛じゃないか。
 しかも相手は酔っているから、明日になれば覚えていない可能性もある。ここで俺が熱く語る必要なんかない。

 町宮のほうへは何度か視線を送って、様子を確認していたのだが、今見ると彼女の姿がない。
 廣中もいないので、ふたりともトイレに立ったのだろう。
 そうは思うものの、気になるので今がチャンスとばかりに俺は佐武さんに挨拶をして席を立った。

「すみません、ふたりは?」

 町宮の斜め向かいの場所に陣取っている徳永さんに声をかけ、彼女が座っていた隣の席に俺は腰をおろした。

「トイレだよ。でも遅いね。俺がいじめすぎたかな」
「なにか言ったんですか?」

 思わず語気が強まった。威嚇するような俺の低い声に、徳永さんの隣にいた北野まで驚いている。

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