今さら好きだと言いだせない
「高木さんはまだ疑ってるみたいだし、一回くらい俺の部屋の中を見ておいたほうが、なにか質問されたときに答えられるだろ?」

 高木さん対策としての発言なのか、と妙に納得してしまった。
 たしかにこの先あれこれ聞かれても、実際に知らなければ上手に受け答えできない。例えばカーテンの色だとか、高木さんなら細かいことを突っ込んで尋ねそうだ。

「昨日、うまそうなローストビーフを衝動買いしたんだけど、ひとりでは食いきれなくて。食べるの手伝ってくれないか? 残った分を捨てたくはないし……」

 捨てるなんてもったいない。それに、食べ物を容易く捨てるのは私も嫌いなので、芹沢くんの気持ちはわかる。
 彼とそういう感覚が同じなのがうれしかった。

「わかった」

 私の答えを待たずして、車はすでに芹沢くんの家の方角へ向かっていた。
 首を縦に振ってしまったものの、やっぱり緊張してきてしまう。
 
 駐車場で車を降りて見上げた先には、スタイリッシュな外観のマンションが建っていた。
 いわゆるデザイナーズマンションというやつだろうか。十五階建てで、一階から十二階までの外壁は茶色だが、上層階は白になっていてオシャレだ。

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