今さら好きだと言いだせない
「飲み会のとき、俺から奪う気でいるって宣言されたからな」
「え、いつの間に……」
「あの人は物腰がやわらかくて普通に常識がある印象を持ってたけど、どうもそれだけじゃなさそうだ」

 なんだか丁寧にオブラートで包んだ言い回しに聞こえたが、要するに飲み会の席で、芹沢くんにも徳永さんの裏の顔が見えたのだと思う。

「徳永さんはやめとけ」

 芹沢くんは静かにつぶやいたあと、紅茶のカップに口をつけた。
 私が徳永さんとの交際に悩んでいるのだと勘違いしているのかもしれない。

「お節介かもしれないが、あの人は人間性がな……。付き合ったら町宮は泣かされそうだ」
「え、付き合わないよ。それは絶対にない! 徳永さんにはすでに付き合ってる恋人がいるから」
「はぁ?!」

 芹沢くんが驚きの声を上げ、目を閉じて右手で頭を抱えた。さすがに恋人がいることまでは知らなかったようだ。

< 134 / 175 >

この作品をシェア

pagetop