今さら好きだと言いだせない
「こんなに(こじ)らせたのは俺のせいだ。体を重ねた翌朝、町宮の態度が素気ないのを目の当たりにして、失敗したなと思ったのもあったけど」

 チラリと私の様子をうかがうように芹沢くんが視線を寄こした。
 もちろん、それについては思い当たるフシがある。たしかにあの日以降何日か、私の態度はおかしかったから。

「俺とそうなって、後悔してるのか……って」
「違うよ! 朝になったらいろいろと恥ずかしかっただけで、好きな人と甘い夜を過ごせて私は幸せだった」

 口にしてしまってからふと気づいた。今の発言は『抱かれてうれしかった』と言ったも同然ではないか。

「じゃあ、今夜も泊っていけよ」
「え?」

 芹沢くんが長い腕を伸ばして、自分のコートの中に私を閉じ込めるようにして抱きしめた。
 気持ちが通じ合ったあとのハグは、胸の中がキュンとして温かさでいっぱいになる。
 私はこんなにも彼が好きだったのだと思い知った。

「雪だ。寒いはずだな」
「ほんとだ。ホワイトクリスマスだね」

 空を見上げた私の額に芹沢くんがコツンと自分の額を合わせ、笑みを浮かべたあとゆっくりと唇にキスをした。
 それは雪がふわりと舞い落ちたような、やさしいキスだった。

「南帆、好きだ」
「私も大好き」

 微笑み合った私たちは指を絡めて手を繋ぎ、彼が予約してくれていたレストランへと向かう。

 そして彼と一緒に、幸せな二度目の朝を迎えた。


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