今さら好きだと言いだせない
「俺、謝ってただけなのに、芹沢が怖い~」

 高木さんは冗談めかしておどけていたが、芹沢くんはにこりともしないので、私のほうがハラハラした。

「芹沢にイジめられたら俺に相談してよ。別れろ、ってアドバイスするから」
「え、選択肢はそれしかないんですか?」
「もちろん」

 聞こえていたのか、芹沢くんが睨むような視線をこちらに送ってきている。
 彼はいつも澄ました顔でテキパキと仕事をしているので、こんな光景は珍しい。


 一週間が経ち、気がつけば徳永さんに誘われた営業部の飲み会が明日に迫っていた。
 会社の近くの居酒屋を予約しているらしく、徳永さんからお店の場所が添付されたメッセージを受け取った。
 各自仕事が終わり次第そこに集合みたいだ。

 私は特に酒の席が好きなわけでも、営業部の人たちと仲がいいわけでもないので、行く前からアウェーな気持ちになっている。
 明日は徳永さんの顔を潰すことなく絶妙なタイミングで帰らなければと、今はそれしか頭にない。

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