今さら好きだと言いだせない
 たった今自分の気持ちに気づいたばかりだというのに、燈子はすでに知っていたらしい。
 私はわけがわからず、鼻をグズグズとすすりながら言葉を詰まらせた。

「調子のいい高木さんに絡まれても、カッコいい徳永さんが現れても、南帆はきっと芹沢くんなんだろうなって思ってた。たぶんね、ずっと前からそうだったんだよ」
「ずっと……前から?」
「そう。自分で気づいてなかっただけで、南帆は全然ブレてない」

 初めから気持ちは変わっていないのだから、頭を混乱させる必要などないと言われた気がした。
 私はこのまま、芹沢くんを好きでいてもいいのだろうか。

「佐武さんと芹沢くんが楽しそうに話してるのが目に入って、悲しくなった」
「そっか。涙はそのせいだったんだね」

 今ならはっきりとわかる。あのとき私の胸の中で渦巻いたドス黒いものの正体は、“嫉妬”だ。
 
 以前、ふたりが会社で立ち話しているのを見かけたときから、私は心のどこかで、ふたりはなにかあるのではないかと疑っている。
 だから余計に今日、親し気なふたりを視界に入れるのはつらかった。

< 76 / 175 >

この作品をシェア

pagetop