今さら好きだと言いだせない
「芹沢くん、今ちょっと話たいんだけどいいかな?」

 高木さんがうちの部に来て二ヶ月くらい経ったころ、偶然社内ですれ違った営業事務の佐武さんに突然呼び止められた。
 彼女は営業部の中でも美人で有名だが、今日はなんだか悲愴感が漂っている。 

 一年先輩の佐武さんとは営業部に行った際に仕事で関わることもあるけれど、今まで親しく話したことはない。
 いったいどういう話なのかと疑念を抱きつつ、通路の隅の人目につきにくい場所まで移動した。

「急にごめんね」
「いいですけど、なにかありました?」
「私はそっちの部に親しい人がいないから、一番口が堅そうで信頼できる芹沢くんに聞くんだけど……高木さんのことなの」

 俺の顔に視線を集めていた佐武さんが、いたたまれないとばかりにうつむく。
 高木さん? あの人がどうしたのだ。
 彼女があまりにも美人だったのもあって、すぐに高木さんと結びつけられなかったこのときの俺は珍しく勘が悪かった。

「そっちでちゃんとやってる? 大丈夫かなって心配で。これ以上問題を起こせばクビになりかねないから」
「ん? ちょっと待ってください。もしかして佐武さんと高木さんって……」
「付き合ってる。……ううん、今は別れてるのかな。とりあえず、芹沢くんが想像してる関係ではある」

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