今さら好きだと言いだせない
 衝撃の事実だ。驚いた俺は片手で口元を覆いながら唖然とした。
 高木さんは美形なわけでもないのに、話術が優れているせいか、女を口説き落とすテクニックだけはあるようだ。
 社内のあちこちで女漁りをした結果、営業部の新入社員を相手に修羅場になったところまでは山本さんから聞いているが……
 よもや営業部の女性で一番モテる佐武さんにまで手を出していたとは。
 彼女にしてみればより取り見取りなはずなのに、なぜわざわざ高木さんなのか、どう考えてもそこが釈然としない。

「今は付き合ってないんですか?」
「私たち、別れたりヨリを戻したりを何度か繰り返してるから……よくわからなくなっちゃった」

 苦笑いの笑みをたたえる彼女を目にし、俺は思わず同情してしまった。かわいそうな人だ、と。

「“問題”って、新入社員の子ふたりに手を出して結果的に退職に追いやった件ですよね?」
「やっぱり芹沢くんは知ってたんだね」
「そのとき、佐武さんとも交際を?」

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