傾国の姫君
類の手が、胸にくる。

「あっ……」

夫が死んでからそういう事がなかったから、身体が熱くなる。

「もう濡れてきてるじゃないか。」

足元を触られて、恥ずかしさが増す。

「駄目だよ。」

「駄目じゃないだろう。身体は正直だ。」

今まで夫以外の人に、触られた事がないのに。

自然と涙が出て来た。

それを見た類が、手を私の身体から離す。

「……強引にでも、抱けばいいのだが。」

悔しい。

こんな無様な姿を見られるなんて。

「覚悟もないのに、そういう事をしても、失敗に終わるだけだ。」

そう言って類は、私の身体から離れると、すぐ側に横になった。

「覚悟ができたら、言ってくれ。」

そして、涙を流しながら、その日は夜を終えた。


それから、類は私に手を出す事はなかった。

私の覚悟を見ているのかもしれない。
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