若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
誰かに贈るというのではなく自分用に購入するべく店内を見回すも従業員は見当たらず、仕方なく、店内を眺めながら女将さんと客の話が終わるのを待つことにする。
ショーケースの上に並んでいる最中も美味しそうだし一緒に買っていこうかなと考えているうちに話が終わったようで、女将さんは出入り口まで客を見送ると、くるりと踵を返してにこやかに歩み寄ってくる。
「里咲ちゃん、いらっしゃい。来てくれて嬉しいわ」
「先日は夕食にお招きいただきありがとうございました」
「良いのよ。また近いうちに食べにきてちょうだいね」
「ありがとうございます」
女将さんは、蓮さんの婚約者……というよりも将来の嫁として気さくに接してくれる。
それは女将さんだけでなく、社長である蓮さんのお父さんに、美人のお姉さん、そして元々気心が知れているお祖父さんは尚更で、八津代家全体で私を温かく迎え入れてくれている。
人の良さを感じる度、蓮さんとの偽りの関係で、みんなを騙していることに心がちくりと痛むのだ。
「いつもので良いかしら?」
練り切りをちらりと見つつ、女将さんに確認され、私が「はい」と返事をした時、店の自動ドアが開いた。