若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
「……どうかしたのか?」
続けて、怪訝そうに響いた声音に、私たちはほぼ同時に視線を移動させた。
戸口で足を止めてこちらを見つめていたのは、蓮さんと蓮さんのお姉さんで彼の秘書をしている璃子さんだった。
ふたりともスーツ姿で、仕事の途中で立ち寄ったような雰囲気だ。
璃子さんが「修羅場?」とぽつり呟けば、一気に気まずさが込み上げてきて、私は自分をじっと見つめてくる蓮さんから視線を逸らす。
一方、渡瀬先輩は「蓮君!」と顔を輝かせて、彼へと駆け寄っていく。
「蓮君! この前言っていた和菓子を食べようと思って、早速来ちゃった」
「……あぁ、そう。気にいるといいけど」
「もうすでに、見た目からして気に入ってるわ。デザインしたのは蓮君だったわよね。すごく綺麗」
瑠璃さんは私がよく蓮さん私案の練り切りを買いに来ているのを知っているせいか、弟相手にはしゃいでいる渡瀬先輩の言葉から察したようで、そろりそろりと私のそばへやってきた。
「残りひとつしかないわね」
「……私、今日は最中を買って帰ります」