若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
小声でそんなやり取りをしたあと、璃子さんは苦笑いでショーケースの向こうへと移動する。
「最中、いくつ買っていく?」
「……どうしようかな」
「残ってるやつ、全部包んで」
手指を消毒しつつ店員の顔で聞いてきた璃子さんへ、迷っている私の横に並んだ蓮さんが答えた。
ショーケースの上に残っていた最中は五つ。
それらを手早く包んだ璃子さんへと、蓮さんが代金を支払おうとしたため、私は慌てて「蓮さん」と呼び止める。
「これは私が払います」
「いい。俺もひとつ食べるから」
璃子さんから受け取った紙袋をそのまま私に手渡して、蓮さんはなんてことない顔で続ける。
「俺の分は残しておいて。あとは里咲が食べていい」
「よ、四つも?」
「四つくらい、一気に食べられるだろ」
「そっ、そんなに食べられません。……食べれるかもしれないけど」
最中も美味しいし、彼が言う通り四つくらいぺろっと食べてしまう気がしてきて弱々しく付け加えると、蓮さんが小さく笑った。