若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
「食べたかったら俺の分まで食べていいぞ」と揶揄われたので、「ちゃんと残しておきます」と膨れっ面をすれば、蓮さんの隣に面白くなさそうな顔で渡瀬先輩が並び、「他に何かオススメはある?」と甘えた声で彼に質問する。
「オススメ? 全部だ」と真面目に答えた蓮さんと、楽しそうに会話を続ける渡瀬先輩の間には割って入っていけず、私はゆっくり後ずさる。
渡瀬先輩はさりげなく蓮さんの腕に触れていて、蓮さんは距離が近いことを気にしている様子はない。
ふたりの後ろ姿を見つめるのも胸が痛いし、最中も買ってもらってしまったし、このまま帰ろうかなと思い始めた時、女将さんがバインダー片手に蓮さんに近づいていった。
「サインをもらいに本社まで行かなくちゃと思っていたのよ。ちょうど良かったわ」
蓮さんは挟んである書類をちらりと見て軽く頷くと、女将さんが持つバインダーを受け取り、内ポケットからペンを取り出す。
サラサラとサインを書き込んでいくその手元を見て、思わず「あっ」と呟く。
女将さんや璃子さんにどうしたのかという視線を向けられて、「なんでもないです」と曖昧に笑い返す。