若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~

けれど、蓮さんだけは私が何に反応したのか気付いたようで、微笑みながら手にしているボールペンを指先で器用に回して見せた。

胸を熱くさせながら、最中が入った紙袋の持ち手をぎゅっと握りしめる。


「私はこれで帰ります。蓮さん、最中ありがとうございます」

「気をつけて」


短くも温かみを感じられる彼からの言葉に微笑んで、そして「またね」と明るく見送ってくれる女将さんと璃子さんに頭を下げてから、不機嫌さを隠さない渡瀬先輩の視線から逃げるようにヤツシロ本店を後にした。

駅へと進みながら途中で振り返れば、蓮さんの隣にはやっぱり渡瀬先輩がいて複雑な気持ちになり、舞い上がっていた気持ちが削がれていく。

蓮さんと渡瀬先輩が親しいのは昔からで、蓮さんの心の中で、私よりも渡瀬先輩の存在の方が大きいのはわかっていたこと。

だから、勘違いしちゃだめだと自分自身に言い聞かせる。

心が嬉しくて震えたのは、先ほど蓮さんが持っていたボールペンにある。

あれは間違いなく、彼が高校を卒業する時に、私が贈ったものだった。




高校に進学し、バスケットボール部のマネージャーになったことで蓮さんとの距離は近くなった。

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