若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~

すぐさま蓮さんに背を向けて部屋を出た方がいいかと考えるも、動揺しすぎて足が動かない。

しばらくその場で固まっていると、やがて背後からバッグを開ける音が聞こえてきたため、着替えが終わったのだろうと予想し振り返り、再び小さく叫ぶ。

まだ上半身が裸だった上にばっちり目まで合ってしまい、気恥ずかしさが込み上げてくる。


「す、すみません。私、すぐに部室出ますから」

「え? 別にいいよ。俺気にしないから掃除続けて」

「私は気になります。と、とりあえず、着替えてください」


蓮さんに背中を向けたまま訴えかけて待っていると、「着替えました」と笑いを堪えているような声音で彼が呟いた。

恐々と振り返り、学生服への着替えが完了しているのを確認してホッと息をついてから、やっとまともに蓮さんと視線を合わせた。


「今日は早く帰られるんですね」

「あぁ。家の用事があって」


「そうですか」と相槌を打った後は言葉が見つからず、私は仕方なしに掃除を始める。

バッグを掴み取ってドアへ向かっていく蓮さんの気配を背中で感じつつ、もう少し話をしたかったなとわずかに肩を落とした時、思い出したように低い声が響いた。


「……そう言えば、富谷ってさ」


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