若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
初めて名前で呼びかけられて、それ以前に蓮さんから話しかけてもらえるなんてと鼓動が高鳴る。
信じられない気持ちで顔を向けると、戸口からこちらを見つめる蓮さんの澄んだ瞳としっかり視線がつながり、鼓動が一気に加速した。
「実家、もしかして旅館やってる?」
「はい。富谷旅館っていう、どこにでもあるような普通の旅館ですけど」
うちの旅館がどうかしただろうかと不思議に思いながらも素直に答えた私に、蓮さんが苦笑いで続けた。
「やっぱり。俺の祖父母が富谷旅館が大好きで、よく泊まりに行ってるんだ」
「八津代先輩のお祖父さんとお祖母さんがうちに? 本当ですか?」
「あぁ。祖父さん同士が昔からの知り合いらしい。だから祖父さんには、富谷さんの孫がお前と同じ高校に通ってるから親切にしろってうるさくて言われてる」
まさか互いの祖父にそんな繋がりがあったなんてと、ほんの一瞬言葉を失う。
「今日帰ったら祖父に聞いてみます。もしかしたら、私も一度くらいお会いしてるかもしれないし」
「うちの祖父さんは、富谷と話したことがあるような口ぶりだったな。気立がいいって褒めてたぞ」