若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
「富谷って、電車通学?」
「いえ、バスです」
「どこから乗ってる?」
「校門の先の大通りにあるバス停です」
ぽつぽつとそんなやり取りを交わした後、蓮さんは「駅まで行かないか」と呟き、自転車を押してゆっくり歩き出す。
慌てて蓮さんを追いかけて、並んで歩きながら言葉の意図を眼差しで問いかけると、それに気づいた彼が口を開く。
「実は祖父さんから、部活が終わったら富谷を店に連れて来いって言われて」
「お店にですか?」
「新作の和菓子を食べてもらいたいらしい。祖父さんの自信作っぽくて」
学校から二十分ほど歩いた先にある駅前に、老舗和菓子屋ヤツシロの本店があるのを思い出し、私はつい前のめりになる。
「たっ、食べたいです! 新作和菓子!」
熱く訴えかけると蓮さんは足を止めて、驚いた様子で見つめ返して来た。
「部活で疲れてない? 帰るのも遅くなると思うけど」
「構いません! 食べたいです!」
私の真剣さに押されるように「分かった」と頷いて、蓮さんは「行くか」とのんびりした足取りで再び歩き出す。