若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
「……それなら今日は?」
「今日もそうだ。元々溝田が店に来ることは知っていたけれど、まさか仕事にまで渡瀬が着いて来るとは思わなかった」
確かに溝田先輩はスーツ姿だったし、プライベートでお店に来ている感じは全くしなかった。
入り口ですれ違った後、きっとふたりと合流したに違いない。
とは言え、仕事で来ているとは思えないほど渡瀬先輩はとても楽しそうだった。
距離も近かったしと、つい不貞腐れたような顔をすれば、蓮さんが私の頬に優しく触れた。
「里咲が俺を見かけた時は、溝田は電話で席を離れていたから、確かにテーブルには俺と渡瀬しかいなかったと思う。けど、仲良くしていたつもりはない」
「……私には仲睦まじく見えました」
「溝田が戻ってきた後は、店が混んできていたからすぐにふたりには別室に移動してもらったし、俺も里咲が帰ってしまったと聞いて慌ててその場を離れたし」
記憶を辿りながらそう説明した後、彼は切なげに私を見つめる。
「俺はずっと、もうすぐ連絡が入るのではと、里咲のことを考えてそわそわしていたんだ」
囁かれたそのひと言に、鼓動が高鳴る。
言われてみれば、蓮さんはあの時スマホをずっと見つめていた。