若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~


「わかっていますから大丈夫です。好みじゃないとでも言ってきっぱり断っちゃってください。……あ、もちろん私からも断っておきますね。そうすれば祖父たちも諦めるしかないでしょうし」


これで最後になるだろうと少し寂しく感じながらも、私のことで蓮さんを困らせたくなくて、必死に考えながらそんなことを言ったと思う。

同意し、そのまま話が進むと思っていたけれど、なぜか蓮さんは難しい顔で十秒以上黙り込んだ。

「何を馬鹿なことをと思うだろうけど」と前置きしてから、すっと息を吸い込んで、蓮さんが真っ直ぐ私を見つめる。


「しばらくの間、俺の婚約者でいてくれないか」


飛び出した予想外の言葉に呼吸を忘れ、私は大きく目を見開いたまま蓮さんを見つめ返す。

なんでも、親が身を固めろとうるさいらしく、途切れなくやってくるお見合いの話にうんざりしているようだった。

おまけに、老舗高級和菓子店ヤツシロでも大きく代替わりが行われようとしていた。

彼は常務から専務へ就任しようとしている時で、そこから数年以内に父親が社長に、彼も副社長へという話が出ているということだった。

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