若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~

だからどうせ彼と会うのもこれで最後だろうと、私もお見合い相手というよりは、かつての先輩後輩として気軽な気持ちで臨んだのだ。

数日後にはお断りの連絡が来る……はずだったのに無く、代わりにまさかの蓮さん本人から「話があるから会えないか」とメッセージが届くことになる。

話ってなんだろうと疑問は抱いたけれど、それを聞かないままに了承して、迎えた約束の日、緊張しながら指定されたフレンチレストランへ向かった。

お店は地下一階にあり、間接照明を使い落ち着いた雰囲気ではあるが、私自身ふたりっきりでの食事にそわそわし通しだった。

蓮さんとテーブルに向かい合って座り、緊張が解けきれないままに運ばれてきたウニのクリームパスタを黙々と食した。

途切れがちな会話がぽつぽつと続き、パスタを半分ほど食べ進めたところで、少し気まずそうに「先日の見合いのことだけど」と蓮さんに切り出され、途端に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

知らない仲ではない私に対して、蓮さんは人を通して断りの連絡を入れ辛く感じ、義理堅くこういった場を設けてくれたのかもしれないと想像し、私は笑顔で両手を横に振った。

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