若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
真っ直ぐに自分を見つめてくる真剣な眼差しから目が逸らせないままに、伝えられた言葉にじわじわと胸が熱くなっていく。
「もっと俺のことを、深く知って欲しいから」
「私もです。私のことも、もっと蓮さんに知ってもらいたい」
身を乗り出し気味に同調し、私たちは見つめ合いながら笑みを交わす。
「今夜早速食事に誘いたいところだけど、あいにく今日は仕事が立て込んでる。でもなるべく、里咲が起きている時間には帰れるようにするから」
「明日は休日ですし、寝ないで待ってます。晩酌にだって付き合いますよ?」
「それなら、先に風呂に付き合ってくれ」
「そっ、それは……考えておきます」
今朝の浴室でのひと時を思い出して思わず赤面した私に「里咲ちゃん、おはよう」と後ろから声がかけられる。
通りすがりに挨拶してきたのは富谷旅館の年配のベテラン女性従業員で、興味で輝くその目はしっかりと車の中の蓮さんを捕らえていた。
蓮さんはその女性従業員に軽く会釈をした後、「そろそろ行くよ」と私に囁きかける。
「お仕事頑張って」
「里咲も」
最後に短いやり取りをし、蓮さんはアクセルを踏んだ。