若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~

車が見えなくなるまでその場で見送った後、私も富谷旅館に向かって歩き出すと、先ほどのベテラン女性従業員が「今のが里咲ちゃんの婚約者? すごく良い男じゃないの」と興奮気味に話しかけてくる。

「えぇ、まぁ」と曖昧に笑いつつ、一緒に歩き出したところでまた「おはようございます」と声がかけられた。

振り返るとそこには高梨君がいて、気まずさを覚えながらも私も挨拶を返した。

彼は先に行くかと思ったが、意外にも私たちと同じペースですぐ後ろをついてくる。

前方に別の女子従業員が姿を現せば、ベテラン従業員が「聞いて! さっき里咲ちゃんの婚約者を見たんだけど」と嬉々として話しかけに行く。

あの様子では、私が蓮さんに車で送ってもらった話が瞬く間に広がっていきそうだなと苦笑いしていると、高梨君が隣に並んだ。


「昨日はすみませんでした。俺のしたことで余計に里咲さんを悲しませてしまったんじゃないかって後悔してました」


こちらを見ず、しかし真剣な面持ちで飛び出した謝罪に、私は首を横に振って、ためらいつつも続ける。


「高梨君のお陰で、蓮さんと今までよりも深く分かり合えた気がするの。あの……色々ごめんね、ありがとう」


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