若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
「蓮さんは渡瀬先輩とは昔から仲が良かったですよね。……お付き合いとかされたりは?」
「あるわけないだろ。渡瀬が仲良いのは俺じゃなくて航の方。付き合うならそっちとだ」
「……確かに、溝田先輩と渡瀬先輩がとても親しいのは否定しませんけど」
とは言え、渡瀬先輩が付き合いたいのは溝田先輩ではなく蓮さんの方なのは明白だ。
その点に関して蓮さんはどう思っているのか疑問に思ったが、折角のふたりっきりの時間に渡瀬先輩の話ばかりするのも癪なため、新作の和菓子へと話題を変える。
そこから蓮さんが昔趣味だと言っていた和菓子作りの話になり、ヤツシロの本店で和菓子作り体験ができると聞き、興奮気味にやってみたいと声をあげたりした。
話が盛り上がってきたところで富谷旅館に到着してしまい、名残惜しさを感じながら私は車を降りた。
「送ってくれて、ありがとうございました」
開けてくれた助手席の窓から覗き込む形で蓮さんに話しかけると、彼の口元が僅かに弧を描いた。
「これからは、時間が許す限り一緒にいよう。朝も昼も夜も、休日だってもちろん、里咲と一緒にいたい」