若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~

けれど、蓮さんの婚約者になると考えると、どうしても脳裏にチラついてしまう顔がある。

だから真剣に問いかけた、「本当に、私で良いんですか?」と。

そうしたら、蓮さんが力強く頷き返してきて、私はぎこちなく微笑んで彼の願いを受け入れたのだった。

ひとまず一年間という約束をし、始まった偽りの関係。

様子を見に蓮さんのお祖父さんの元を訪ねた時は、思っていた以上に元気で呆気に取られ、一方で私と蓮さんの話がまとまったことに大喜びされ、たくさんの祝いの言葉に実際は違うのにと心が痛んで仕方なかった。

偽りの関係だから当然だけれど、最初の三ヶ月は蓮さんから電話も連絡も一切なかった。

その間、連絡先は交換していたから何かメッセージでも送ろうかと、私は何度もスマホを手に取ったけれど、急を要する用事など特になく、すぐに指が止まる。

蓮さんは仕事が忙しいだろうし、私からの不必要なメッセージなどそれこそ煩わしいものでしかないはずだ。

一度も会わないまま、約束の一年が終わってしまうかもしれない。

そんな予感を抱き始め、三ヶ月が過ぎようとしていた時、突然事態が動き出した。

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