若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
私たちが全く会っていないことを親たちが知り、八津代家はその原因が蓮さんの多忙さにあるという結論に至ったようだった。
実家住まいの私と、老舗和菓子店ヤツシロの本店近くで一人暮らしをしている蓮さん。
蓮さんが私の実家近くへ引っ越ししてみたらどうだろうという話から、私が日頃から家を出てひとり暮らしをしたいと言っていたこともあり、もういっそ同棲してしまってはどうだろうと、話は盛り上がっていった。
そんなの蓮さんが嫌がるに決まってるじゃないと苦笑いで聞いていたが、なぜか彼は了承し、私は半ば実家を追い出されるような形で蓮さんが暮らすマンションへ行くことになる。
初めて足を踏み入れた部屋は、必要最低限の家具だけが置かれているような生活感のあまりない場所だった。
無駄に広いリビングにぽつんと立ちながら「本気で私と一緒に暮らすつもりなんですか?」と問うと、蓮さんはなんてことない顔で「あぁ」と答えた。
聞けば、平日はほぼ本社にいるため、ここには寝に帰ってきている状態らしい。
「休日だけは少し我慢してもらうようだが」と前置きしてから、「俺とルームシェアでもしていると思ってしばらくここに滞在してくれないだろうか」と至極真面目に言ってきた。