若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~

今月末に退職することが決まったため、送別会を兼ねてと仲が良かった同年代の女子だけで夕食の約束をしてあるのだ。


「と言っても、明日も普通に仕事があるので、そこまで遅くなったりはしないと思いますけど」

「わかった。俺も仕事でパーティーに呼ばれてて、こっちも多少帰宅が遅くなる可能性があるな」

「わかりました。お仕事頑張って下さい」


ちょうど赤信号で車を停止させた蓮さんへ微笑みかけると、彼も私を見て何か言いかけた。

しかし、「ありがとう」とだけ言い、視線を前方へ戻す。

それから、ヤツシロ本店や本社の近くに引っ越ししようかという話をしているうちに車は富谷旅館に到着する。

さっきの微妙な間はなんだったのだろうと不思議に思いながらも、車を降りるべくドアに手をかけた瞬間、「里咲」と呼びかけられた。

顔を向けると同時に唇を奪われて、思わず目を大きくする。


「行ってらっしゃい」


美麗な微笑みと共に甘く囁きかけられ、瞬時に熱くなった頬に、しなやかで細長い指先が触れる。

焦れるような指先の余韻にはにかんでから、私は窓の外に目を向ける。

誰もいないのを確認してから、素早く身を寄せて、蓮さんの頬にキスをし返した。

< 94 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop