若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
私の中に幸せな感情を残して、車は走り去っていった。
ゆるりと振り返って、目の前に建つ富谷旅館を見上げれば、寂しさや前向きな気持ちなど様々な感情が込み上げてくる。
慣れ親しんだ場所から新しい環境へ身を置くことに不安はある。
けれど、蓮さんがそばにいてくれたら私は頑張れると強く思えた。
富谷旅館で働く残り少ない日々をしっかり勤め上げようと、力強く歩き出した。
何のトラブルもなく一日の業務を終えて、疲労感を吐き出すようにホッと息をつけば、次は楽しみにしていた食事だと足取り軽くスタッフルームへ向かう。
十五分もしない内に、一緒に食事に行く同年代の女子社員たちが集まってきた。
私を入れた四人で賑やかに話をしながら富谷旅館を出た。
四人で目指すのは、まるで童話にでも出てきそうな可愛らしい外観のイタリアンレストラン。
最近新しく出来たばかりで、開店前から何度も話題に上がっていた。
最寄り駅から少し距離があるけれど、お喋りしつつ歩けばそんなの気にならないくらいあっという間だ。
数分待った後、通された席で、魚介類のトマトリゾットに舌鼓を打つ。