夜風のような君に恋をした
部屋に入ると、勢いよくドアを閉ざし、そのままドアに背中を預けて立ち尽くす。

胸の奥から、ドクドクという心臓の音がひっきりなし鳴り響いていた。

思うに冬夜と出会ったあの高架は、午前九時に五年前の同じ時間に繋がる。

だとしたら、冬夜が亡くなるのは今夜だ。

冬夜がもうすぐ亡くなってしまうという事実が、また胸に迫って、私は立っていることができずにその場にしゃがみ込んだ。

そんなの、絶対に嫌だ。

助けたい、何が何でも助けたい。

でも、どうやったら助けられる?

死にたがりの彼を助けられる?
 
そもそも冬夜は、どうして死んだんだろう?

死にたがりだけど、死ぬのは怖いって言っていたのに。

冬夜の死のきっかけを作ったのは何だった?

冬夜との会話の中から、必死にその答えを見つけようとして、記憶を辿る。

だけどこれといったものが見つからず、頭を抱えていると、スカートのポケットの中でスマホがブルブルと震えた。

芽衣からメッセージが届いたらしい。
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