夜風のような君に恋をした
――やっぱり。

確信した私は、覚悟を決める。

冬夜のことを聞き出すには、今までずっと秘密にしていた複雑な家庭事情を芽衣に話すしかない。

あれほど懸命に芽衣との間に一線を引いてきたのに、必死になっている今は、ためらいなどなかった。

「あのね。実は私のお兄ちゃん、引きこもりなの」

芽衣の顔から目を逸らさず、私は続けた。

「高校の時不登校になって、今は二十一歳だけど、大学にも行ってないし、働いてもいないんだ」

芽衣が、固まったように目を丸くする。
< 175 / 232 >

この作品をシェア

pagetop