あやかし戦記 愛ゆえの選択
「こちらになります」

ツヤはそう言い、部屋のドアを開ける。その先にあった空間に、イヅナとヴィンセントは目を輝かせた。

部屋一面に、ツヤの家で見かける畳が敷かれており、ロビーで見かけたランプが吊るされている。家具は赤やブラウンで統一され、部屋の窓からはマオ国の街や山が見渡すことができた。

「素敵な部屋だね。こんなところに泊まれるなんてドキドキする。でも、夜中は妖に用心しないといけないよね?」

エイモンがツヤの方に目を向けると、「ああ」と従業員からアレス騎士団の顔に戻ったツヤが答える。そして、エイモンに紙を手渡した。

「ここに、この旅館で行方不明になった人間のリストが書かれている。行方不明になったのは、全員一人旅をしていて、家族がいない人間ばかりだ」

「なるほど……」

エイモンが受け取った紙を、イヅナとヴィンセントも目を通す。ツヤの言った通り、行方不明になった人はみんな一人旅で家族はいない。そして、宿泊費を前払いしていた。
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