廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「さ、さぁ!もう中に入りませんか?開演時間も迫っていますので」

「あら、そうね。遅れたら大変だわ。行きましょう」

おばあ様が言うと、セドリックは会場内に目を向けた。
チケットを手にした人々が楽しそうに入場しているのを見て、彼も目を輝かせている。
拗らせ大英雄のことなんて、もう忘れてしまったかしら?
良かったわ、人嫌いに子ども嫌いが加わるなんてマイナスイメージだもの。

「おい」

「……え?あ、はい?」

頭上から聞こえた声に反応し、私は顔を上げた。
その瞬間、体がフワリと浮き、ダリオンの顔面が間近に迫った。

「どわっ!?ど、ど、どうしたのですか?ダリオン様っ!?」

「ここは人が多い。小さいお前は踏まれるかもしれないからな」

「だから抱き上げたと?あの……でも……踏まれたりしないと思いますが?」

「絶対にない、とは言い切れない」

ダリオンは軽く片手で私を抱き、そのまま群衆の中をかき分けて進んだ。
一際大きなダリオンに周りの人々は威圧されて脇に避け、私たちの周囲だけ誰もいなくなった。

「大きすぎるのもどうかと思ったけど、物は使いようね」

うしろでおばあ様が軽く嫌味を言い、それを聞いたセドリックが、答えに困って苦笑いをしている。
しかし、ダリオンは周りの様子など気にも止めず、ズンズンと会場内を進んでいくのであった。
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