廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
2、王子と赤い髪の巫女

私たちが案内された席は二階の特別室で、舞台が広く見渡せる一番良い席だった。
完全個室になっていて座席数は四つ。
椅子は肘掛けが豪華な金色で、背は革張り。
前世で行った世界一有名なヨーロッパの歌劇場、それに匹敵するような美しさにため息が漏れた。

「わぁ……素敵」

「この場所が取れるなんてさすがエスカーダ家ですね!僕、帰ったら父様に自慢します」

私とセドリックは目を輝かせた。

「ここの劇場支配人は顔馴染みなの。昔、ディミトリと良く来ていましたからね。私が予約する時は、必ず特別室を取ってくれるのよ」

そう言うと、おばあ様は目を閉じた。
ディミトリ様との数々の思い出を回顧しているのかもしれない。
興奮冷めやらぬ私たちが席に着くと、ほどなくして開幕五分前のベルが鳴った。
場内が暗くなり、人々が慌ただしく席に着く。
そして、開幕の本ベルが鳴ると、静寂が訪れた。

本日の演目は『王子と赤い髪の巫女』。
事前に貰ったチラシには、赤い髪の美しい女性に、手を差しのべる男性のイラストが描かれている。
私は沸き上がる感情を抑えながら、舞台を見つめた。
弦楽器が軽やかなメロディーをかなで出す。
すると、舞台中央がほのかに明るくなり、奈落から異国の衣装を纏った語り部がせり上がって来た。

「ごきげんよう、皆様。本日語りますは、遥か遠き国の王子と小さな集落に生まれた巫女との悲恋の物語。彼らの運命の行方を、どうか最後までご覧下さいますよう……」

語り部が優雅に頭を下げると、一瞬舞台が暗くなる。
次に光が戻った時、物語はゆっくりと始まった。
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