廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
ああ、なんとか、この状況を伝えることは出来ないかしら。
身動きはとれない。
声も出せない。
でも、何か伝達手段が……。
その時私は、天啓のようにダリオンの教えを思い出した。
そうよ!「救難信号」だわ!
あれなら、指先さえ動けば樽をつついて伝えることが出来る!
幸い指先は自由に動く位置にあるし、上手くやればランスとレグナント軍ならきっと気付いてくれるはず。
でも……。
これをしくじるとたぶん機会はやってこない。
微かな希望と、迫りくる絶望の狭間で、覚悟を決めて爪を立てた。
トントントンー、トントン。
と、リズミカルに三回。
すると、外が一瞬静寂に包まれた。
やった!ちょうどいいわ!静かな今ならちゃんと聞いてもらえるかも。
私はもう一度、救難信号を鳴らした。
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