廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
2、結末

「しっ!何か聞こえないか?」

ランスが言った。

「ああ!それはこれでしょうなぁ」

老人が答えると、ゴトンと木枠が外れるような音がして、続いて唸るようなランスの声がした。

「子ブタにニワトリ?なぜ調味料の樽の下に入れているのだ?」

「非常食なのですよ。馬車の広さに余裕がないもんで、場所の節約のために考え出したのです」

用意周到過ぎて腹が立つわ!
これでは、どんなに樽の中から音を出しても子ブタやニワトリの仕業として片付けられてしまう。
気付いてくれるかとも思ったけど、話の上手い奴隷商人にランスは太刀打ちできるかしら……。

「ふぅーん。そうか」

案の定、ランスは納得したように言った。
ダメだわ、なんとかランス以外のレグナント軍に、いえ、ダリオンに音を拾って貰わないと!
私は焦りながらも、小さい音で救難信号を出し続けた。
諦めない。
ダリオンはきっとこの音を聞いてくれる。
助けを求める音を、大英雄は聞き逃さないんだから!

「それでは、もうよろしいですか?」

「ああ……あっ!いや、ちょっと待ってくれ」

ランスと老人の会話の間にも、私は一心不乱にリズムを刻む。

「すみませんが、こちらも商売で急いでいます。遅れて損をしたらレグナント軍が責任を取ってくれるのですか?」

「責任ねぇ……それよりも、自分の心配をした方がいいかもよ?」

ん?
なにか会話の内容がおかしいような気がするわね。
ランスの言動を訝しんだその瞬間、大地を震わせる轟音が響いた。
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