廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「何も聞こうとしなかった……見ようとしなかった……そんな私が、ディミトリを感じとれるはずなんてないわよね?」

「カトレア様……」

穏やかに微笑む老婦人は、静かに胸を押さえた。
それは、己の内なる「大切な何か」と対話しているように見える。

「ルキア・フェルナンシア」

「え、あ、はい」

「感謝します。あなたの心遣いにより、私はディミトリにもう一度会えた。彼と人生を共にした頃の、楽しい時間を取り戻すことが出来ました」

「いえ、そんな……」

私は自分に出来ることをしただけ。
でも、転生してから全く使うことの無かったこの「特技」、これでカトレア様が笑顔を取り戻せるなら、少しだけ誇れる気がする。

「子供が謙遜などするものではありませんよ。それより……私は決めました」

「何をですか?」

カトレア様は、スッと立ち上がると呼び鈴を鳴らした。
何かセルジュに用事があったのだろうか?
そう考えている内に、執事は光の早さでやって来た。

セルジュは椅子に腰かけた私を見て、あからさまにホッとした表情をした。
そして、息を整えつつ、カトレア様に近付いた。

「お呼びでしょうか?」

「セルジュ。イエーレン先生の手紙をこちらに」

「え……イエーレン様の……?はい、今すぐに!」

返事をするとセルジュは隣の応接室へと向かい、何通かの手紙を持ってきた。
束になった手紙は、ざっと見ても二十通はある。

「お持ち致しました。あの、これを如何されるのですか?」

「住所を確認して、返信しておくれ」

「え……なんと返信を?」

セルジュの顔がひきつった。
イエーレン先生が何者かを知らない私は、ただ成り行きを見つめることしか出来ない。
だけど、とても重要な人だというのはわかる。
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