廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「あなたの言うことも一理あるわね。良いでしょう、私は診察に専念することにします……しかし、気は変わりませんよ?」

ダリオンは何も答えず静かに頷いた。
私は前世の職業病とでもいうのか、人の顔色を窺うのが得意である。
カフェや公園で人を観察するのが趣味で、それを役者としての経験に生かしたりもしていた。
だけど、ここまで表情に乏しい人に出会ったのは初めてだ。
何を考えているのかが、全然わからない。
悲しいのか悔しいのか、楽しいのか嬉しいのか……ダリオンの心は固い氷の箱に閉ざされているようだ。

「それでは、私は書斎で仕事をします……ランス、決済書類を持ってこい」

「……は?あ、はい。今、持ってきます!」

慌てて立ち上がるランスを伴い、ダリオンはさっさと応接室から出ていった。
二人分の足音が遠ざかると、真っ先にミレイユがへたり込み、ローリーとエレナも長いため息をつく。
その中で、おばあ様だけが、好戦的な表情をしていた。

「ふん、悪くないわね。さすが私の孫。一筋縄ではいかないわ。でも、頑固ねぇ。一体誰に似たのかしら」

絶対にあなたです!と、その場の全員が考えたはずだ。

「ルキア、ごめんなさいね。私の押しが弱かったせいで……」

「いえ、そんなことないですわ……じゃなくてっ!おばあ様、婚約者ってどういうことでしょうか?」

龍虎の対決に気圧され、スポーンと頭から飛んでいたけど、大変なことなっていたんだった!

「どういうことって……何がかしら?」

おばあ様は無邪気に首を傾げた。
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