廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
7、奇跡の広がり

私とセドリックが人形劇に励んでいる間、真面目にリハビリを続けたおばあ様の視力は劇的に回復していた。
当初、治る可能性は五十パーセントだった。
でも、おばあ様は気力と意地でそれを百パーセントまで引き上げたのである。

「私の想像どおり!ルキアはとても愛らしい子だったわ」

世界の輪郭や色がはっきりと見え始めたおばあ様は、私を見てそう言った。
正直言って、容姿には自信がない。
「愛らしい」なんて、縁のない言葉だけど、おばあ様に言われると、なんだか認められたみたいで嬉しかった。

おばあ様の治療が終わると同時に、私が参加する療養所での人形劇も、終わりを迎えることになった。
最終日には、涙目の患者さんやローズ、寂しそうなセドリックに盛大なお別れ会を開いてもらった。
今まで毎日会っていた人と、いきなり会わなくなるのは寂しいけれど、これが最後というわけじゃない。
まだ、おばあ様は定期検査に行くだろうし、その時、セドリックやみんなに会える。
そう思うと、楽しみが少しだけ増えた。

診療所に行く必要がなくなってから、エスカーダ邸の朝食は少し遅めになった。
相変わらず、ダリオンは早朝にいなくなるけれど、私とおばあ様はのんびりしたものである。
その日も、いつものように食後のお茶を楽しんでいると、ローリーが唐突に言った。

「そう言えば、聞きましたか?あの噂!」

「いきなり何です?」

おばあ様は上品にお茶を飲みながら、横目でちらりとローリーを見た。
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