堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「いえ、突然のことで驚いただけです。今も、このような恰好で申し訳ありません」

「いや」
 ジルベルトは座っているソファの隣をポンポンと叩いた。もしかして、そこに座れということだろうか。いやいや、パメラもいると言うのに。
 助けて、という視線をパメラに向けると、彼女はニッコリと笑って、お茶とお菓子の準備をしようとしている。パメラの顔には、私には何も見えませんと書いてあるかのよう。むしろ書いてある。

「失礼します」
 エレオノーラは仕方なくジルベルトの隣に座った。お茶とお菓子の準備を終えたパメラはペコリと頭を下げて、部屋を出る。できる侍女は何も言わなくても心得ているようだ。つまり、いろんな人のいらぬ気遣いによって、この部屋に二人きりにされてしまった、というわけで。

「エレン」
 ジルベルトは、肩から流れ落ちているエレオノーラの髪を一束すくった。
「その姿もよく似合っている」
 すくった一束に口づけを落とす。
「あなたに会いたかった」

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