堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「たまには私だって真摯なところを見せないと、な」

「あなたはいつだって、ジェントルでしょ?」

 彼女のそれに、アンディもゆっくりと笑みを浮かべる。彼女とのこういう言葉の駆け引きも悪くはない。
 マリーの腰に手を回して場所を移動する。奥のボックス席。
 ここは、入口からは死角になって誰がいるのかもわからない席だ。ボックス席同士もそこそこ離れていて、隣に誰がいるかなんていうのは、座っているだけではわからない。わざわざ相手の席まで足を運ぶのであれば別だが。
 そんな面倒なことをする人たちもいない。何しろここで酒を飲む人たちは、そういう人たちばかりなのだから
 つまり、この席はこういった密談とかするときに使う場所。ちょっとだけ下心があって、ちょっとだけの人が使う場所。
 ただ、最も適している場所は上の部屋ではあるのだが、そこではもっと大きな下心が丸見えだし、その下心が邪魔をしてまともな会話もできなくなる。だから、ほんの少し真面目な話をするときにはこの場所がいい。

< 167 / 528 >

この作品をシェア

pagetop