堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 川を渡ってすぐのところで、ジルベルトは馬を止めた。彼が颯爽と馬からおりたため、エレオノーラもおりようとしたら、ジルベルトによって腰を抱きかかえられてしまう。それによって、颯爽ではなく、ふわりとおりる羽目になった。

「ここで少し休憩しよう」
 マックスを木につなぎながら、ジルベルトが言った。

「お疲れ様、マックス」
 エレオノーラはマックスの頭を優しく撫でた。マックスも悪い気はしないのだろう。機嫌の良かった彼は、より一層機嫌が良くなったらしい。そんなマックスさえもうらやましく思ってしまうジルベルト。

「この辺りでいいか?」

 誰に聞くわけでもなく、一人呟くと、ジルベルトは敷物を敷いた。大きな木の下。目の前の少し先には川がちろちろと穏やかに流れている。

「では、ジル様。お昼ご飯にしませんか?」

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