堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 楽しみができると仕事ははかどるもので、エレオノーラは翻訳に精を出し、ジルベルトは騎士団の任務に励んでいた。エレオノーラの翻訳は本来の仕事とは異なるものだが、それでも第零騎士団のレオンとしての仕事ではなく、ジルベルトの婚約者のエレオノーラとして受けたという仕事で、それなりにこなす。

 最近のジルベルトは、サニエラからは「気持ち悪いですね」という苦情が入るくらい、ときおり思い出したように口元を歪め、書類に目を通し、勢いよく押印していたようだ。

 つまり、お互いがお互いに浮かれていたのだ。だから、それはその浮かれた結果が招いた悲劇だとしか言いようがない。

「エレンがいなくなった」
 と血相を変えたジルベルトがフランシア家の屋敷に飛び込んできたのは、その芝居が終わってからのことだった。

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