堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「第零騎士団諜報部レオン」

「な、な、マリーが諜報部だと?」
 彼の眼には驚きの色が走った。ひっくり返った亀のように手足をばたつかせながら、彼女を見つめる。

「正確には諜報部の私がマリーに扮していた、ですね。はい、リガウン団長、グリフィン公爵の拘束をお願いします」

 マリーに扮していたレオン、つまりエレオノーラはすっと立ち上がると、気絶していた四人のうちの一人が起き出して逃げようとするところに気付き、それを追いかけた。
 女の足で間に合うのかと思うところだが、彼女の足は速かった。逃げ出すそれに追いつくと、ジャンプと同時に回し蹴りでそれのこめかみを狙う。そして運悪く逃げ出そうとした男の一人は、見事に横に吹っ飛んだ。
 回し蹴りはフランシア家の得意技なのか、と思いたくなるほど。思わずジルベルトがその回し蹴りの威力と美しさに茫然としてしまうほど。

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