堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 エレオノーラは頷く。

 そうか、とジルベルトは呟いたが、あの第零騎士団たちが彼女を手放すとは思えない。それに騎士団という組織を考えた場合、彼女を失うことは組織としての損失も大きいはずだ。だが彼女の意思は固そうだ。

「騎士団を辞めて、田舎に引っ込もうと思います。私を知らない人たちのなかで、ひっそりと暮らしていこうと思います」

 騎士団の退団から田舎へ引っ込むという、話が変な方向に転がっていった。騎士団退団については、今回、このような事件が起こったため、仕方ないかもしれないと思う者もいるかもしれない。だが、田舎へ引っ込むというのは、どういうことだろうか。誰がそのような展開を想像しただろうか。そもそもフランシア家はそれを許すのだろうか。
 いや、それよりもエレオノーラはジルベルトの婚約者だ。その婚約は、どこへいったのだろうか。
 次から次へと沸き起こる疑問。だけど、ジルベルトはそれを心の中に押しとどめておく。

「いや、エレン。あなたは私の婚約者のはずだが? それまで辞めるつもりか?」
 もちろん、驚いたジルベルトはそう口にする。

「私はジル様の婚約者としてふさわしくありません」
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