堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 ジルベルトはまた飲んでいた酒を吹き出しそうになった。

「どうした? 急に。頭でも打ったのか?」

「いえ。いたって真面目ですよ。セレナさんって、ボクの理想の女性そのものだったんです。それにセレナさんて、団長の奥さんのお友達なんですよね」

 目をきらきらと子供のように輝かせて、ジャックが言った。
 彼が言うには、同じ馬車に乗り合わせた時に、思い描いていた理想の女性が目の前にいた、とのこと。さらに言うならば、語学も堪能で、あの陛下の通訳を堂々とこなしている姿も凛々しいとか。

「ジャックさん。本当にセレナが好みなんですか? あんな真面目くさった女性が」
 ドミニクが言う。中身が妹であることを知っているからか、少し言葉に毒がある。妹には激甘な兄たちであるが、妹が変装した人物についての評価は低い。

「はい。ボク、こんな見た目だから、女性に騙されることが多くて」

 こんな見た目。つまり、どこか頼りない見た目。女性に騙されやすいということは、根が真面目なのだろう。
「でも、セレナさんなら誠実なお付き合いができると思うんですよね」

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