堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「大丈夫。彼女には言ってあるから」

 言ってある? どういう意味だ? エレオノーラは首を傾げたくなった。

「君はバーデールでもいろいろ活躍しているみたいだね」

 だから、アレックスのその笑顔が怖い。その怖い笑顔を浮かべながら、彼は懐から一枚の紙切れを取り出した。

「エレン・フランシス。バーデール王立学院騎士科の第二学年。ドラギラ騎士団との協力により、ホワイト子爵の悪事を暴き身柄拘束へと貢献する」
 もちろんアレックスは何かの報告書を読んでいるわけだが、それを聞いたときにエレオノーラは吹き出しそうになった。なんだ、その情報は。
「それが縁で、この学院に留学に来たみたいだな。だから、滞在先もあのリガウン侯爵家なのだろう?」

「そーですねー」
 返事をするこちらは、まるで棒読み。

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